歯周病のリスク因子について

歯周病の進行が速い人と遅い人

歯周病のリスク因子①:喫煙

喫煙者は非喫煙者に対して約2.5倍から6倍のリスクがあります

タバコは様々な病気のリスク因子と言われていますが、歯周病にとっても大きなリスク因子の一つです。
では、どうして喫煙者は歯周病が進行しやすいのでしょうか?
タバコに含まれているニコチンという物質には、血管を収縮させる作用があります。そのため、血管が膨張して見られる発赤、腫脹が現れにくく、気付かないうちに進行していることが多いのです。
また、タールという物質が歯に付着してしまうと、歯面がざらついてしまいます。一般的に「ヤニ」と呼ばれているものですが、ざらついている歯面は、プラーク(細菌の塊)を付着しやすくさせます。 
さらに、煙に含まれる物質は、細菌に対する抵抗力を低下させることがわかっています。つまり、喫煙者の方は、口腔内の細菌が体内に侵入しても、抵抗力が弱まっているため、細菌が暴れてしまう恐れがあるのです。
 

 
 要するに、喫煙者は、ヤニの付着によりざらつく歯面になるため、プラーク(細菌の塊)がたまりやすく、抵抗力が弱まることにより非喫煙者と比較すると歯周病の進行が早く進んでしまいます。(1日1箱で約4.72倍)にもかかわらず、ニコチンにより目で見える発赤、腫脹が現れにくく、気づかぬうちにかなり歯周病が進んでいることが多いのです。
 
進行した歯周病を治癒させるためには、あるいは、治癒した歯周病の再発を予防するためには、禁煙は必須となります。このため当院では、喫煙者に対する歯周外科処置、およびインプラント治療は原則として行いません。

 

歯周病のリスク因子②:糖尿病

 
歯周病と糖尿病については、糖尿病の方は歯周病が悪化しやすく、また、歯周病の方は糖尿病が悪化しやすいという双方向の関係性があることがわかっています。
 
糖尿病が及ぼす歯周病への影響

歯周炎は、歯肉の境目のポケット(歯周ポケット)に入り込んで繁殖した嫌気性細菌(歯周病関連細菌)の感染による慢性の炎症性疾患です。そのでき方(発症)や進み方(進行)には、遺伝的因子や環境的因子など加えて、からだの抵抗性が大きく関与しています。
したがって糖尿病により、からだを守るマクロファージの機能低下・結合組織コラーゲン代謝異常・血管壁の変化や脆弱化(細小血管障害)・創傷治癒の遅延などが起こり、歯周病の発症・進行に影響を与えます。その結果、糖尿病があると歯周病関連細菌により感染しやすくなり、炎症により歯周組織が急激に破壊され、歯周炎が重症化していきます。

 

歯周病が及ぼす糖尿病への影響 
歯周病関連細菌から出される内毒素が歯肉から血管内に入り込み、マクロファージから腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生を促進します。その結果、TNF-αの亢進が血糖値を下げる働きを持つホルモンであるインスリンを作りにくくする、効きにくくする(インスリン抵抗性)ことがわかっています。すなわち、慢性炎症としての歯周炎の存在により血糖値は上昇し、糖尿病のコントロールをますます困難にし、同時に歯周病も進行していくという悪循環に陥ります。インスリン抵抗性に対して体は何とかしようとして、より多くのインスリンを産生しようとします(高インスリン血症)。しかし、高インスリン血症が長く続くとインスリン産生細胞である膵臓β細胞が疲弊し、さらに糖尿病が悪化します。
 
※厚生労働省 e-ヘルスネットより引用